ハリス・ディキンソン アイアンクロー

Harris Dickinson 英国エセックス 1996.6.24生誕

主な出演作:ブルックリンの片隅で(2017)
      逆転のトライアングル(2023)
      アイアンクロー(2024)
      SCRAPPER(2024)
      ベイビー・ガール(2025)

 この映画「アイアン・クロー」は、1980年代のアメリカで名を馳せたレスラー兄弟とその近親者たちの、プロレスラーとしての絶頂や個人的な人生の浮き沈みを描いたフィクションであります。大いなる愛情こそあれ厳格な父が自身のプロレスラー経験を生注ぎ込んで、4人の息子たちを世界ヘビー級チャンピオンになることを宿命付けたが、長兄ジャックは死去。プロレスラーになるべく鍛えられていた次男ケビンがデビュー。彼に続いて三男デビッド、四男ケリーもデビューを果たし、1980年代より”フォン・エリック3兄弟”として売り出され、父フリッツが主宰していたWCCW(ワールド・クラス・チャンピオンシップ・レスリング)において多大な人気を博すまでになりました。デビュー後またたくして、三男デビッドと四男ケリーが絶頂に近づき、リングデビューした五男マイクも試合中の負傷から後遺症を患ってしまって、ケビン以外の兄弟全員が亡くなるのを見届けるという悲劇的な物語(彼らテキサス州出身のレスラー一家は、6人の息子のうちケビン以外の5人が若くして亡くなり、3人は自殺という悲劇に見舞われている)になってしまっているのです。父である名レスラー、フリッツ・フォン・エリックの必殺技にちなんで名付けられた「アイアン・クロー」は、一家がレスリングをしていた約 30 年間の愛憎極まるプロレス一家の”栄光と悲劇的な歴史”を象徴しています。
 監督のショーン・ダーキンは、表面的な”マッチョで骨太、アクション満載でアドレナリン全開”といった典型的なこれまでのプロレス映画の描き方に、真の兄弟愛とレスラー人生の紆余屈折を持ち込むことに成功し、実に見事にバランス良くストーリーに引き込んでいます。これぞ、紛れもなくレスラー人生を語った骨太な力強い作品といえましょう。
 さて、本当に”小6までプロレスラーになることが夢だった私”が見た、歴史上最もヘビーテイストな”プロレス物語”。このフリッツ・フォン・エリック・ファミリーの物語は、何度か映画化の企画が立ち上がったものの、プロレスの再現など映像化の困難さもあり、立ち消えになっていたが、監督であるダーキンが「どうしても撮りたい」と強く主張したことで、ようやく企画が実現した、という情報を掴んで、劇場公開の相当前からワクワクしていたのでした。

 この映画でのハリス・デッキンソンは三男デビット役。次男ケビン(ザック・エフロン)よりも長身で体格に恵まれ、マイクパフォーマンスも上手でタレント性もあり、兄より”華のある”レスラーを演じています。実際、この役のため体重増量した長身のハリスのレスラー・パフォーマンスは、スポットライトの当たった四角いリング上で誰よりも”映えて”いましたね。しかしストーリー上では、世界チャンピオン挑戦の直前に謎の死。惜しまれながら、”夭折”ということになって、突然スクリーン上からその姿が見られなくなります。それでも、5男・マイク(スタンリー・シモンズ 〜ミュージシャンを目指していたが、ある出来事からリングへ上がることとなった)と兄弟間でふざけるところとか微笑ましい場面があり、心温まるシーンでした。

 この映画のようにプロレスラーのような上背を利用した大味な役や「SCRAPPER」で演じた不器用な父親役からすると、「ベイビーガール」で見せた女性上司を翻弄する美青年役を経ての次回作、あのビートルズの自伝的映画で、最も繊細な人物のジョン・レノン役とは同じ英国人、ハリス・デッキンソンの演技の”振れ幅”はどんだけ凄いのぉ?と心配にもなりますが、この大役を演ずる彼を次のスクリーンまで大いに期待しつつ待っていようと思います。

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